薬剤師……。
「あー、薬剤師、なんか一人で歩いてたんで拾って持ち帰ったんすよ」
持ち、帰った。
「いやあ、いいこっすよね。泊めてあげる代わりに、色々ご薬もらっちゃってますよ」
「っ、てめぇ」
「は?どうしたんすか、そんな怖い顔して。もしかして、あっれ?彼氏さんですか?」
「っ」
「おかしいなあ、薬剤師いないって言ってたのに……彼氏さん、なんすかね?」
「違う、けど……」
「なら、何をさせようが自分の勝手っすよね!」
「そういうわけじゃないだろ」
なんだ、こいつ。こいつは、見た目と同じで中身もチャラチャラしてるのか?
最初の頃いい人のような気がしていたのは、気のせいでしかなかったのか。
「じゃ、どういうわけっすかー?あ、もしかして好きなんすか?彼女のこと」
ニヤニヤしながら聞いてくる。俺はそのふやけた面に拳をねじ込みたかったが、暴力はいけない。
ぎりぎりまで、限界まで我慢しなくてはいけない。
とは言っても、このふざけた野郎からどうにかして愛澤を奪還しなくてはいけない。
なんとなく、人を毛嫌いしてる愛澤ならどこか一人で寒さに震えている方がイメージにあったが、こうやってこいつのところにいるということがわかったのだ。
これが、無理やりでないのなら、会わせろと言っても渋ることはないはずだ。
「愛澤に会わせてくれ」
「好きなんすか?」
どうやら、これを答えなくては先に会話を進ませる気はないらしい。
この時、俺は思案した。何と答えれば問題なく愛澤に会わせてもらえるのか。
首を横に振れば、「なら会わせる必要ないっすよね」と言いそうだ。
それに対して、首を縦に振れば馬鹿にしてくるかもしれない。
それでも、会わせてくれる可能性は、こっちの方が高いだろ。
「俺は……」
「……なんなんすか?じれったいっすね」
こんな、適当に好きだとか嫌いだとか言っていいのか?
でも、なんていうか、言うことが人助けに繋がるかもしれないし……っていうのは、それを理由にしたいからだ。
今まで俺は一度も、異性に対して好きだという言葉を言ったことはなかった。
言ってしまえば、おとめチックかもしれないがその言葉を大切にしているのだ。それを、こんな形で、目の前のチャラ男を騙すためだけに使っていいのか?
ウソ言葉だと言ってしまえば、そういうことであるかもしれないが、なんだこのわだかまりは。
「ハッキリ言ってくださいっすよー、もー」
ああ。もういい。
自分の心の中だから、いい。懺悔しよう。
俺は、間違いなく、愛澤に対して異性を感じている。薬剤師としてみている。
なんともないように生活をしていたところで、実は気にしてる。ださい寝顔を見られたくはないし、寝言を聞かれたくない。
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